自立支援医療(精神通院医療費の公費負担)

うつ病を含む精神疾患の通院治療費の負担を軽減できる制度があります。それは、自立支援医療(精神通院医療費の公費負担)です。この制度は所得制限 が設けられ、住民税を23万5,000円以上払っている人は原則利用できない仕組みになっています。しかし、うつ病の場合「重度かつ継続的に治療が必要な 精神疾患(図表)」に該当し、平成27年3月末までは経過措置として所得にかかわらず利用できることになっています。

この制度を利用すると、対象となる精神疾患を治療するために発生する通院治療費、投薬費、デイ・ケア費、訪問看護費の患者負担分が原則1割となります。また医療費の月額には上限金額が設定されていて、それを超えて請求されることはありません。


出典:生命保険の保険市場


対象となる方
何らかの精神疾患により、通院による治療を続ける必要がある程度の状態の方が対象となります。
対象となるのは全ての精神疾患で、次のようなものが含まれます。

  • 統合失調症
  • うつ病、躁うつ病などの気分障害
  • 不安障害
  • 薬物などの精神作用物質による急性中毒又はその依存症
  • 知的障害
  • 強迫性人格障害など「精神病質」
  • てんかん

など

医療費の軽減が受けられる医療の範囲
精神疾患・精神障害や、精神障害のために生じた病態に対して、病院又は診療所に入院しないで行われる医療(外来、外来での投薬、デイ・ケア、訪問看護等が含まれます)が対象となります。
※精神障害のために生じた病態とは、精神障害の症状である躁状態、抑うつ状態、幻覚妄想、情動障害、行動障害、残遺状態等によって生じた病態のことです。
【注意】次のような医療は対象外となります。

  • 入院医療の費用
  • 公的医療保険が対象とならない治療、投薬などの費用(例:病院や診療所以外でのカウンセリング)
  • 精神疾患・精神障害と関係のない疾患の医療費


医療費の自己負担
ア)    1か月当たりの負担には上限を設けています(これに満たない場合は1割)。上限額は、世帯※1の所得に応じて異なっています。
※1    ここでいう「世帯」とは通院される方と同じ健康保険などの公的医療保険に加入する方を同一の「世帯」として捉えています。

世帯所得状況 自己負担
上限月額
生活保護受給世帯
0円
市町村民税非課税世帯であって受給者の収入が80万円以下の場合
2,500円
市町村民税非課税世帯であって受給者の収入が80万円より上の場合
5,000円
市町村民税235,000円未満 医療保険の自己負担限度額(関連リンク:医療費を助成する制度を参照)が上限となります。
市町村民税235,000円以上 医療保険の負担割合が適用されます。(本制度の対象外です。)

 


イ)    さらに、統合失調症などで、医療費が高額な治療を長期間にわたり続けなければならない方(本制度では「重度かつ継続※2」と呼んでいます)は、1か月当たりの負担限度額が低くなります。
※2     「重度かつ継続」の対象者
「重度かつ継続」の対象となるのは、次のいずれかに該当する方です。

  • 医療保険の「多数該当」の方(直近の1年間で高額な治療を継続して行い、国民健康保険などの公的医療保険の「高額療養費」の支給を4回以上受けた方)
  • 1〜5の精神疾患の方(カッコ内はICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)による分類)
    1. 症状性を含む器質性精神障害(F0)例)高次脳機能障害、認知症 など
    2.  精神作用物質使用による精神及び行動の障害(F1)例)アルコール依存症、薬物依存症 など
    3. 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害(F2)
    4. 気分障害(F3) (例)うつ病、躁うつ病 など
    5. てんかん(G40)
  • 3年以上精神医療を経験している医師から、情動及び行動の障害又は不安及び不穏状態を示すことから入院によらない計画的かつ集中的な精神医療(状態の維持、悪化予防のための医療を含む)が続けて必要であると判断された方
世帯所得状況 自己負担
上限月額
●次の世帯の自己負担は、ア)と同様です。
生活保護受給世帯
0円
市町村民税非課税世帯であって受給者の収入が80万円以下の場合
2,500円
市町村民税非課税世帯であって受給者の収入が80万円より上の場合
5,000円
●次の世帯が、「重度かつ継続」に該当する場合、以下のように自己負担が軽減されます。
市町村民税課税世帯で、33,000円未満
5,000円
市町村民税33,000以上235,000円未満
10,000円
市町村民税235,000円以上
20,000円



ウ)     これらを図にすると、以下のとおりです。

手続き

  •  申請は市町村の担当窓口で行ってください。※市町村によって、担当する課の名称は異なりますが障害福祉課、保健福祉課が担当する場合が多いようです。
  • 申請に必要なものは概ね以下の通りですが、自治体により異なる場合がありますので、詳しくは市町村の担当課や、精神保健福祉センターにお問い合わせください。
  • 申請が認められると、「受給者証(自立支援医療受給者証)」が交付されます。


【申請に必要な書類】

  注意事項 入手できるところ
自立支援医療(精神通院)支給認定申請書   市町村等(医療機関等にも置かれている場合があります。)
医師の診断書
  • 通院している精神科の病院・診療所で記入してもらいます。※1
  • 「重度かつ継続」に該当する場合は、様式が異なることもあります。精神障害者保健福祉手帳と同時に申請する場合や、前年の申請で診断書を提出した場合など、診断書が省略できる場合もあります。市町村・精神保健福祉センター等にご確認ください。
市町村等(医療機関等にも置かれている場合があります。)
世帯の所得の状況等が確認できる資料
市町村民税課税世帯の場合 市町村民(住民)税の課税状況が確認できる資料(課税証明書)※2 非課税証明書は市町村で入手できます。
生活保護世帯の場合 生活保護受給証明書 市町村又は福祉事務所
市町村民税非課税世帯の場合
  • 市町村民(住民)税の非課税証明書※2
  • ご本人(18歳未満の場合は保護者)の収入が確認できる書類(障害年金などの振込通知書の写しなど)
非課税証明書は市町村で入手できます。
健康保険証(写しなど) 世帯全員の名前が記載されている被保険者証・被扶養者証・組合員証など医療保険の加入関係を示すもの。  
その他
自治体によって必要書類が異なることがあるので、市町村の担当課や精神保健福祉センターにお問い合わせください。


※1本制度による医療費助成を受けられるのは「指定自立支援医療機関」での医療に限られています。診断書を記載できるのも同様です。多くの精神科の医療機関は対象となっていますが、今通院している病院や診療所が指定自立支援医療機関とは限りませんので、ご確認をお願いします。
※2申請する市町村で必要なデータを把握している場合(概ね、前年度の1月に申請する市町村に住所がある場合)は、窓口で市町村民税等調査同意書を提出すれば、課税証明書・非課税証明書の提出が省略できる場合もあります。


【医療を受けるときには】
本制度で医療を受ける際には、交付された、「受給者証(自立支援医療受給者証)」と、自己負担上限額管理票を、受診の度に、医療機関にお示しください。

受給者証の有効期間

  • 受給者証の有効期限は、原則として1年です。
  • 1年ごとに更新が必要になります。更新の申請は、おおむね有効期間終了3ヶ月前から受付が始まります。また、治療方針に変更がなければ、2回に1回は医師の診断書の省略ができますので、詳しくは申請した市町村にお問い合わせください。


本制度で医療を受けられる医療機関や薬局について
本制度による医療費の軽減が受けられるのは、各都道府県又は指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」(病院・診療所・薬局・訪問看護ステーション)に限られています。

精神科の医療機関等の多くは「指定自立支援医療機関」となっていますが、利用されている医療機関等が対象となっているかどうかは、医療機関におたずねいただくか、精神保健福祉センター、都道府県、指定都市等の担当にお問い合わせください。


出典:みんなのメンタルヘルス総合サイト