意外?うつ病患者に多い肥満 その食生活の特徴


決して他人事ではない病、うつ病。最近では薬での治療以外にも、食生活からアプローチする方法があるという。

 食欲がなくてげっそり…。うつ病の患者といえば、そんなイメージがあるかもしれないが、意外なことに肥満が多い。

「食事を準備する気力がなく、朝食を抜いてしまう。昼や夜は外食や買ってきたものが中心で、肉類や炭水化物をとりすぎる傾向があります。夜中、眠れずにスナック菓子などを食べてしまい、肥満になるのです」と、国立精神・神経医療研究センターの今泉博文氏は話す。

 うつ病患者は、まじめで自分に厳しい性格の人が多いとされる。それがあだとなり、極端な食事をしている例も多いそうだ。

「『一日1食がいい』と書かれた本を読めばその通りにし、牛乳が体にいいと聞けば6リットルも飲んでしまう。健康のためにと、通常の食事のほかにプロテインの栄養補助食品を大量にとり、タンパク質過多で太ってしまう人もいました」

 うつ病と食事の関係は、近年、研究が進んできた。食生活が乱れ、必要な栄養が不足することで症状が悪化すると考えられている。また、人によっては抗うつ薬の副作用で食欲が増すこともある。誰かと一緒に食べていれば、食事の偏りに気づきやすいが、うつ病の患者は「孤食」が多い。今泉氏は、食事や栄養の指導を通して、通常の薬物療法を補完している。

「ビタミン・ミネラルでは、ビタミンB群、葉酸、鉄、亜鉛。脂肪酸ではDHA、EPA。アミノ酸ではトリプトファン、チロシン…。うつ病と関係が深いと報告されている栄養素はいくつもあります。野菜や果物、魚などに豊富で、うつ病の患者は不足しがちです」

 ただ、栄養素の改善は生活リズムと食生活が整ってからの課題。それよりも、過不足なく3食食べるための指導が先だ。

「手間のかかるカロリー計算はせず、『お菓子は半分』『牛乳は朝コップ1杯』など、ハードルの低い指導から始めます。自炊が難しい患者も多いので、缶詰や加工食品に野菜を追加して食べる方法などを教えています。休職して食費を切り詰めている人もいますから、安上がりに済ませられることも重要です」

AERA 2015年7月6日号より抜粋