10代にも増えるうつ病 その「サイン」


うつ病というと、ストレスの多い大人がかかるものだと思いがちだが、近年は10代の子どもにも症状がみられるようになったという。

 児童精神科医の猪子香代・猪子メンタルクリニック院長によると、子どものうつ病の有病率は10代で3~8%とされ、児童期から青年期の間にうつ病を体験する人は20%という調査もあるという。

 子どもならではのうつ病の症状はいくつかある。いつもイライラしている、何をするのも遅くなる、面倒くさがり話さなくなる、などだ。ただ、こうした症状だけでは、うつ病かどうか見分けにくい。特に思春期は、ただでさえ落ち込んだりイライラしたりしやすいものだ。

 ひとつの目安は、学校に行くことがつらくなるなど、今までは楽しくやれていたことが苦しいと感じるとき。さらに、朝起きられず、夜眠れない日が続くなど、生活に支障を来しているときだ。こうした行動が2週間以上続くときは、うつ病のサインの可能性があるという。

「特に『自分はダメな人間だ』と、自責感が強いときは注意が必要。『死にたい』などと言い始めたら、自殺に結びつく可能性もあり、早めに医療機関を受診してほしい」(猪子さん)

「ゲーム依存」に、うつ病、うつ状態が潜んでいることもある。長年小中学校でスクールカウンセラーを務めてきた、東京認知行動療法センター臨床心理士の松丸未来さんが相談を受けた中に、こんなケースがあった。

 ある男子中学生は、ゲームにはまって夜更かしが続いた。深夜から宿題を始めても思うように進まずイライラし、床をドンドン鳴らしたり、大声を上げたりすることが多くなった。朝起きられず学校に遅刻し、授業中は寝てしまう。勉強はついていけなくなり、親に叱られ、相談できる友だちもいなかった。松丸さんのもとを訪れた男子中学生は、こんな本音をもらした。

「別にゲームがしたいわけじゃない。イライラするし、それしかやれなくなって…」

 うつ病の症状が影響していた。松丸さんはこう話す。

「『ゲームばかりやって』と叱る前に、どういう理由があってその子がゲームばかりしているのか、まず子どもの話をじっくり聞いてみてください」

※AERA 2015年7月6日号より抜粋