病気になったらできるだけ早く適切な対処をする--。これが重症化を防ぐ鉄則であり、治せる病気であれば回復を早める後押しになります。そのために大事なのが、病気を早く見つけることです。では、うつ病には“サイン”があるのでしょうか。くどうちあき脳神経外科クリニック院長、工藤千秋さんに聞きました。【聞き手=医療ライター・竹本和代】
◇うつ病早期発見の手助けに
うつ病のポイントは、1)今まで興味のあったものに全く興味を持たなくなった2)気持ちの落ち込みが2週間たっても回復しない--などで、これらがあったらうつ病の可能性が高いと考えていいでしょう。しかし、いつから始まったかはっきりしないので、こうした症状は早期発見の手助けにはなりにくいといわざるを得ません。
そこで注目していただきたいのが「早朝覚醒」です。早朝覚醒とは、起きようと思っている時間よりずっと早く目が覚めることで、「睡眠障害」の一つです。睡眠障害には、なかなか寝つけない「入眠障害」と、夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」もありますが、うつ病に伴う睡眠障害には早朝覚醒が多いので、うつ病を早期発見するサインになります。
◇こころの疲れで目が覚める
人は加齢に伴って目覚めが早くなりますが、働き盛りや若い世代の人が午前3時、4時といった時間に目が覚め、そのあとなかなか眠れないとしたら、心が疲れている証拠です。さらに、その状態がほぼ毎日、2週間以上続いているなら、うつ病の可能性があります。
自分自身、またはパートナーに早朝覚醒が続いているなら、できるだけ早く精神科か心療内科を受診してください。せっかくサインに気づいたのですから、早く治療を始めない手はありません。そうすることで重症化を防ぐことができ、早い回復が期待できるでしょう。
ただし、こころの問題を扱う診療科は、とくにほかの科以上に、医師と患者の相性が治療に影響を及ぼしやすいといえます。この先生とは合わないと思ったら、医師を変えたほうがよいでしょう。
◇自己診断は厳禁
うつ病の患者さんには、抗うつ薬を使いたくないという人が少なくありません。抗うつ薬を使わない場合、一般的には漢方薬の処方や、認知行動療法(ものごとの受け取り方を修正することで気分や行動を変化させる精神療法)が行われます。
ただ、それで効果が上がらないときは、抗うつ薬を併せて服薬するほうが早く治る可能性が高いことを知っておきましょう。抗うつ薬は進歩しており、副作用は以前よりかなり軽減されています。
うつ病のサインに気づいたとき、最もしてはいけないことは、自分が“主治医”になって自己診断してしまうことです。インターネットの情報をもとに、自分はうつ病だと決めつけ、「私はうつ病なのでこの薬を出してください」と言って来る患者さんが実際にいます。
しかし、病院は「薬を出すところ」ではありません。病院は、どういう治療がいいのか相談するところであり、その相談に対して患者さんと一緒になって考えるのが医師です。うつ病かもしれないと思うと病院に行きたくない気持ちになるかもしれませんが、相談機関だと思ってぜひ早めに受診してください。
毎日新聞