体表を温める「全身温熱療法(WBH)」を受けたうつ病患者に、症状の改善が見られたとする研究結果を、米ウィスコンシン大学マディソン校やアリゾナ大学の研究者らが発表した。
「温熱療法」は、赤外線や超音波、マイクロ波などを熱源とし、体のある一部分や全身を、症状や目的にあわせて39~42度程度まで温める治療法。米国では主にがん治療の補助的な方法とされ、化学療法や放射線療法と組み合わせて利用されている。個人差があるものの、腫瘍の発達を抑制したり、がんの進行を遅らせることが期待できるという。
研究者らは、温熱療法を受けていたうつ症状を持つがん患者に、うつ症状の改善が見られたとする報告があることに注目。
うつ病の患者でも、温熱療法によって治療効果があるかを確認するため、2013年2月から15年5月までにウィスコンシン大学の医療センターを受診し、うつ病と診断された338人の患者から、18?65歳までの30人を無作為に選び、比較実験を実施した。
実験前には、被験者にうつ病の重症度をスコア化して確認できる「ハミルトンうつ病評価尺度」を受けてもらい、全員が16点以上(中程度以上)となっていることを確認している。
実験では、被験者全員に「全身温熱療法を受けてもらう」と説明し、実際には16人に実際に温熱療法を、14人には温熱療法ではない別の治療法を実施。6週間に渡って治療をおこない、1週間おきに「ハミルトンうつ病評価尺度」を受けさせている。
その結果、温熱療法を受けた被験者たちはスコアに改善が見られ、温熱療法を受けていない被験者に比べ1週目に6.53点減少した。その後も、2週目6.35点、4週目4.5点、6週目4.27点、と常に減少していた。
なお、実験中に被験者たちが医師から処方された向精神薬を服用するのは禁止されておらず、薬物などの影響は実験結果に加味されていない。研究者らは、対象数をより拡大して検証を続ける必要はあるとしつつ、「少なくとも 温熱療法は、他の治療法に比べ、長期間安全でそれなりの効果が期待できる治療法となるのではないか」とコメントしている。
発表は、米国医師会の精神医学分野専門誌「JAMA Psychiatry」2016年8月号(Vol 73, No. 8)に掲載された。
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