うつ病を発症すると、じつに様々な症状があらわれます。こうした症状は、いったいなぜ引き起こされるのでしょうか?
うつ病発症の原因をとくカギとなるもの、それは「脳」にあります。
私たちの脳内には、様々な種類の神経伝達物質があります。主な役割として、私たちが生きていく上で欠かせない「食べる」「歩く」といった行動について指令を出すことが知られていますが、ほかにも、「セロトニン」「ノルアドレナリン」「ドパミン」といった物質が、過度のストレスや疲労により減ってしまうことで、意欲低下や気分の落ち込みを招く可能性が考えられています。
うつ病が発症する原因は、とても複雑です。
現在、様々な病気の発症の原因解明に、新たな遺伝子の発見が貢献しています。そんななか、うつ病に関係する可能性のある遺伝子もいくつか発見されていますが、うつ病イコール「遺伝病」とはいえません。なぜなら、遺伝子だけを原因としてうつ病を発症する過程を説明することは、非常に難しいからです。
うつ病は、その人自身のものごとに対する考え方や生活環境、日常生活において発生したストレスなどが複雑にからみあって引き起こされます。つまり、仮にうつ病を発症しやすい遺伝素因を持っているからといって、その人が必ずうつ病を発症するという訳ではありません。
うつ病になると、「気がめいる」「ゆううつ」などと精神面に影響を及ぼします。そういったことから、こころの病気と捉えても間違いではありません。しかし、実際には脳を構成する無数の神経伝達物質のうちの、「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減少することから、脳の情報伝達にトラブルが起こる病気、という捉え方もできます。
ストレスが、うつ病発症のきっかけになることもあります
うつ病の発症には、ストレスが大きく関係しているといわれています。
「こころが弱い人はストレスに弱いから、うつ病を発症するのではないか」と考える人がいるかもしれませんが、ストレスとはそもそも「こころやからだにかかる刺激や負荷」を指します。
つまり、人によっては思いもよらない出来事がストレスになるのです。
親しい人との死別や離婚、あるいは病気になるなどといった悲しい、つらい出来事がストレスとなるのは理解しやすいと思われます。しかし、それ以外にも昇進や結婚、こどもの独立など、どちらかというと明るい人生の転機でさえストレスとなることがあるのです。
悲しい、苦しい出来事だけでなく、喜ばしいことが原因となってうつ病を発症するのはどうしてでしょうか?
環境の変化に対する受け止め方は、人によって様々です。喜ばしい出来事であっても、それが急激な変化となって自分の生活に影響を及ぼす場合、自分なりに考え、対処することが難しく、それが大きなストレスとなってうつ病発症の要因となることもあるのです。
今の社会は経済やシステムの構造がめまぐるしく変化し、日常生活の様々なシーンにおいて急激な変化や進歩に対応しないといけません。そうした社会背景が、うつ病の患者さんを急増させているのかもしれません。
出典:うつ病〜こころとからだ