近年、受験生のうつ症状が増えているといわれる。その治療法と予防について、ベネッセ教育情報サイトでは、受験生のうつ病治療に数多く携わってきた、本郷赤門前クリニック院長の吉田たかよし氏に伺った。
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日本ではこれまで、うつ病の治療は主に、抗うつ薬で進められていました。抗うつ薬として広く使われているSSRIやSNRIは、従来の三環系抗うつ薬などに比べると、副作用はかなり軽減されています。ただし、脳が未発達な未成年が服用すると、かえって自殺のリスクを高める場合もあるという研究が発表されており、使用には十分な注意が必要です。ウォーキング、ジョギングなどの「運動療法」、考え方を柔軟にすることで心を楽にする「認知行動療法」、また「うつ磁気刺激療法」など、投薬以外の方法での治療もありますので、医師に治療法を相談しましょう。
お子さまがメンタル面で問題をかかえている場合、大なり小なり家庭でのコミュニケーションがうまくいっていないことが多いです。家庭では、8対2ぐらいの割合で、お子さまの話をたくさん聞いてあげましょう。どんな進路に進もうとも、自分は子どもをしっかり愛しているということを伝えてあげてください。受験をするのであれば、お子さま自身に受験の目的意識があることが大切です。小学校受験では、幼児であっても、面接などでは本人のやる気を非常に見ています。日常の会話からお子さまの興味を引き出して、進路選択のサポートをしてあげてほしいですね。
このように書くと受験は悪いもののように思われるかもしれません。しかし、受験はお子さまのメンタルを鍛えるよい機会でもあります。「受験」という壁を親子で乗り越えることで、得られるものは多いといえます。お子さまの目指す進路を、ぜひ前向きに応援してあげてほしいですね。もし、うつ症状が出てしまっても、学生時代にうつ病が出てよかったと思っていただきたいのです。学生のうちならば、主治医が学校に「主治医意見書」を出し、授業の受け方や通学頻度などについて学校と病院が連携をとりながら治療を進められます。