気分が落ちこむ、眠れない、食欲がわかない…このような症状が続くときは、うつ病を疑った方がよいかもしれません。しかし、うつ病を自分自身で判断するのは難しく、診断には医療機関の受診が必要になります。
ここでは、うつ病の診断に用いられる検査の種類から、治療法についてまで詳しく解説します。
■うつ病の診断・検査方法
問診うつ病を疑って医療機関を受診した場合、一般的にはまず医師による問診が行われます。問診では、最近の体調や生活習慣などの聞き取りを行い、患者の状況を把握します。さらに、家族への面接や、生育歴、病歴、症状が現れる前の性格などから総合的に診断を下します。
DSM-上記のような問診のほか、近年では、患者が訴える症状に焦点をあてて診断する「DSM-」という方法が取り入れられることも多くなってきました。「DSM-」は、アメリカの精神医学界が提唱しているうつ病の診断基準で、「あらゆることに対する興味や喜びが著しく減退している」「ほとんど毎日のように不眠または過眠に悩んでいる」「食事制限もしていないのにほとんど毎日食欲の減退または増加」「集中力が低下している、物事が決断できない」などのチェック項目に対し、どの程度当てはまるかなどでうつ病の診断をする方法です。それらの症状が、薬やアルコールの影響によるものや他の身体的な病気、もしくは近親者の死などといった重大な喪失感を伴う出来事に誘因されたものと言い切れなかった場合は、うつ病と診断されます。
光トポグラフィー検査光トポグラフィー検査は、近赤外線を使用した機械で前頭葉の血流量の変化を確認する検査方法です。うつ病と健康な状態の血流量にはパターンに違いがあるため、うつ病を客観的に診断することができます。しかし、この検査のみでの診断を行うことはなく、あくまで診断の補助として用いられます。
■うつ病の治療法
「うつ病」と診断された患者には、病状に合わせた治療法が行われます。次に、基本的な治療法を紹介します。
薬物療法抗うつ薬や気分調整薬などを服用して、病状を改善していく治療法です。うつ病のもっとも基本的な治療法と言えます。
精神療法カウンセリングや周囲の交流を通じて、物事の捉え方や不安感をコントロールしていく方法を身につけます。「認知行動療法」「対人関係療法」などがあります。
磁気刺激治療(TMS)脳の特定の部位に微弱な磁気刺激を与え、脳細胞を活性化することで、脳内の神経伝達物質のバランスを整える治療法です。薬物を使わない新しい治療法として近年注目を集めています。
電気けいれん療法麻酔で眠らせた状態で、脳に電流を流し、けいれんの刺激を与えて治療する方法。電流が脳の全ての神経細胞を一気に興奮状態にし、その興奮が数種類の神経伝達物質を放つことでうつ症状が和らぎます。通常の治療では治らなかった重度のうつ病患者などに用いられます。
■うつ病の薬とその効果
うつ病は、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れから起こると考えられているため、処方される薬も、そのバランスを整える作用を持つものが中心となります。「抗うつ薬」はセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質に作用する「セロトニン再取込阻害薬:SSRI」や「セロトニン・ノルアドレナリン再取込阻害薬:SNRI」などが有名です。また、抗うつ薬の効果を増強し、かつ補完する薬として抗不安薬や睡眠薬、漢方薬などと併用されるケースもあります。
2015.11.29 ヘルスケア大学から引用